Jin's Report 2012

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月光

第11戦 7月27日

【移動距離120マイル/約192km】
“That Famous Preston Night Rodeo”Preston, ID. (PRCA)
“ザット・フェイマス・プレストン・ナイト・ロデオ” 
アイダホ州プレストン

とうとう7月最後のロデオまで、一度も8秒乗れることなく、きてしまった。落ちまくった7月を、どうにかいい形で終わらせたい。気負いと焦りが入り混じった、複雑な感情が頭のてっぺんからつま先まで巡っていた。
練習仲間でもあるテイト・ジョーンズとダスティン・ジャクリンと共にプレストンへ向かう。彼らも最近はあまり調子が良くない。3人が3人とも現状を打破しようと、もがいていた。
しかし車内では、ムード・メイカーのダスティンがしゃべりまくり、クールを装うテイトが運転をしながらそれに絡み、私は後部座席で途中から爆睡していた。「まずはロデオを楽しむこと」それが、私たちの合言葉だ。
会場に入ってすぐにチェック・インと選手用に用意された食事を済ませ、ブルを探しにいった。バー・T・ロデオ社のK23 Alamo アラモ。灰色がかったまだら模様に左右に向けて直線に伸びた角、いかにもブルらしいブルだ。この夏、すでに二つのロデオで、このアラモに乗った選手が優勝している。つまり、いいブル、だ。しかも、かなりいい、ということだ。
ブルの抽選はPRCAの本部にて、公正に行われるのだが、今年の私はとにかく「いいブル」に当たりまくっている。これだけ当たり続けるというのも、稀だろう。それゆえに、モノにできていない自分が腹立たしい。この夜が、挽回する絶好の機会だ。

一緒にきたテイト(左)とダスティン(右)
一緒にきたテイト(左)とダスティン(右)

金曜の夜の会場は満席だった。昨年もこのロデオに出場したが、このプレストンもよくお客さんがはいる。残念ながらソルト・レイクでは満席になることはないが、こういう小さい町では今もロデオが主役になりえる。
その観客の中に、日本人の女性がいた。ロデオ・アナウンサーが福岡から来ていることと彼女の名前を告げ、ロデオ・クラウンが彼女の元に駆け寄りマイクを渡し、彼女も観客にむけて、日本語と英語を交えて挨拶をした。
まさか、プレストンに日本人の方がいるとは思いもしなかった。このロデオ・アナウンサーは、私がブルライディングに出場することを知っているので、そのこともこの時点で観客に伝えた。
この女性は思いも寄らぬことだろうが、シュート裏では他のブルライダーから「彼女はジンの奥さんか?」と真面目な顔で聞かれていた。無論、面識もない。どのような理由でプレストンにいたのか、私も知る由もない。そう答えておいた。それほど、この町に日本人が二人もいることが、珍しいことなのだろう。

ロデオ前にウォーミング・アップをするバレル・レーサーたち
ロデオ前にウォーミング・アップをする
バレル・レーサーたち

ブルライディングが始まる。最初に確認したときは、アラモは右のデリヴァリーに入ると聞いていたので、右のシュート裏で待機していたが、私の聞き間違いだったのか、アラモは左のデリヴァリーに運ばれた。左のシュート裏へ行き、デリヴァリーにいるアラモにロープを巻いた。
ここのところ、左のシュートから出るブルに当たる確立が高い。そのほとんどが、出てすぐか、2ジャンプ目には左へ回る。このアラモも、その類に属していた。一つ違うことといえば、ただ旋回するというよりも、ベリー・ロールを左に回りながら繰り返すという、こちらとしてはやっかいな技を持っていた、ということだ。
跳ぶたびに、前後の足を、ストレッチをするかのごとく伸ばしきり、着地するやいなやすぐに回り込むように跳ね、伸びる。私の身体が体勢を崩し、回転の内側に傾いていくとみるや、決めにかかり、わずか3度のジャンプで振り切られ、私はまたも井戸の中に沈んだ。ブルファイター、マーク・ギルの素早い反応で、アラモに踏みつけられることなく逃げることは出来た。

バー・T・ロデオ社 K23 Alamo アラモ
バー・T・ロデオ社 K23 Alamo アラモ

同じような落ち方を繰り返している……。問題が解決できていない。私の鬱憤は、頂点に達していた。
シュート裏に戻り、出る直前のテイトに声をかけたが、彼も2秒で振り落とされた。ダスティンも似たようなものだった。
苛立ちを抑えつつ、片付けを始めた。どーにかしないと、いけない。そればかりを考えていた。余計に片付けるのに時間がかかる。
すべてをしまい終え、あの女性に声をかけようと思ったが、残念ながらすでに彼女は観客席をあとにしていた。

どのような形であれ、ロデオを観戦してもらえることは競技者としてありがたい。日本に馴染みがないゆえに、なかなかアメリカまで来て観てもらう機会もそうはないと思う。この女性にしても、たまたまだったのかもしれないが、そのロデオに私が出場していたというのも、偶然ではないと思う。プレストンでの滞在において、ロデオが印象に残ってくれればと願う。
駐車場ではテイトとダスティンが、うなだれながら待ち構えていた。
アリーナ横のカーニヴァルからは、まだ歓声が聞こえていた。
夜空を見上げると、月が眩しかった。
帰り道、その光が私にも差し込んでくれることを、願った。


翌日第12戦 7/28 ユタ州キャッスル・デイルの試合動画

 

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