Jin's Report 2011

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異変

第17戦 8月5日

【移動距離270マイル/約432km】
“War Bonnet Roundup Rodeo” Idaho Falls, ID. (PRCA)
“ウォー・ボネット・ラウンドアップ・ロデオ”
アイダホ州 アイダホ・フォールズ

ブル・ペンから見たメイン・スタンド
ブル・ペンから見たメイン・スタンド

この日も3人でロデオに向かった。前日と同じくチャド・コール、出場しないアレックスに代わってダスティン・ダニエルズが加わった。チャドの家に集まり、彼の車に乗り込んでI-15をひたすら北へ。車内で話すことといえば、あのブルはこうだ、このブルはこうだ、どこどこのブルはどうだ、そんなことばかりだ。
ダスティンも昨夜ヒーバーに来ていた。彼も8秒乗れなかったが、チャドのライドを観ていた。本当にいいライドだったのだ。
チャドも「ブザーが鳴ったように聞こえて、ちょっと力を抜いた瞬間落ちてしまった。そしたらブザーが鳴っていた」と説明してくれた。0.2秒足りなかった、その悔しさは、ブルライダー同士でしかわからない…。
この二人は現時点でのウィルダネス・サーキットのランキングでトップ12に入っている。サーキット・ファイナルズ出場を果たすためには、あと2ヶ月弱、その順位を維持しないといけない。上位5人以外は、確定というにはまだ早い。特にこのサーキットはつわもの揃いで、混戦だ。20位くらいまでの選手に、出場の可能性はまだある。

出番を待つアメリカン・バッファロー
出番を待つアメリカン・バッファロー
出番を待つアメリカン・バッファロー

私もダスティンも、アイダホ・フォールズは初めてだった。チャドも数年前に来て以来ということで、フリーウェイからの道を覚えていなかった。ダウンタウンを抜けてガソリン・スタンドに寄り、ロデオ・グラウンドへの道順を聞いた。
町のはずれの牧草地帯に、その大きなスタンドが建っていた。ロデオ開始は午後8時だというにもかかわらず、スタンドは半分近く埋まっている。3人でブル・ペンに向かい、それぞれのブルを確認した。私のブルはグラウニー・ブラザーズ社の+601 Blue Light Special ブルー・ライト・スペシャル。灰色のような色なのだが、私たちの間ではこういう色を「青色=ブルー」と表現する。かなり大きいブルで、昨日のクラッシン・タイム・アゲインと同じくらいある。
ブル・ペンのブルに混ざってアメリカ・バッファローが二頭いた。競技の間に行われたアトラクションで披露された、調教されたアメリカン・バッファローだった。周りにいるブルたちよりもさらに大きい。

選手用に食事を提供してくれた女性二人
選手用に食事を提供してくれた女性二人

ロデオまでには時間があるので、選手用の食事が提供されているテントで食事をした。女性二人が切り盛りしていた。チャドは相変わらず食べられない。「選手にはビールはただよ」との一言で、彼はビールを一杯だけ頼んでいた。
シュートでは、小学生から中学生くらいの少年たちが、ミニチュア・ブルライディングの準備をしていた。私も初めて観たが、脚が極端に短い小型のブルで、確かに少年向けではある。けれども、ブルであることには変わりはないので、跳ねる、飛ぶ、回るといった動きは「ブル」そのものだ。それに果敢に挑戦する彼らも、やはり将来は『プロ』を目指すのだろう。


ミニチュア・ブルライディングに挑む少年たち
ミニチュア・ブルライディングに挑む少年たち

空を見上げると、巨大な雨雲がロデオ・アリーナを飲み込もうとしていた。アイダホ・フォールズに入る手前で、雨は降っていた。走り続けた私たちは、その雨雲を抜けたが、それがゆっくりとこちらに向かっていた。
ロデオ・オフィスにてエントリー・フィー221ドルを支払い、車に戻ってギア・バッグを出そうとしたところ、雨が降り始めた。バッグを出すのを止め、しばらく様子を見る。しかし、雨足は強くなるばかりだ。ひとまず車の中で止むのを待つことにした。8時になって、予定通りロデオが始まる。雨の中、オープニング・セレモニーが行われていた。観客も傘を差し、カッパを着込んで観ている。私たちも車を出て、バッグを担ぎシュート裏へ向かった。いったんシュートの下にバッグを置いて、濡らすことだけは避ける。
サドル・ブロンコの選手も同様に、サドルを濡れないようにシュート下に置いている。ベアバックの選手はすでにリギンを馬に取り付けているので、それをビニール袋で覆っている。雨の場合、すべての選手が、それぞれの道具が濡れることを避ける。かといって、雨が理由で、ロデオが中断することはない。

雨が止み始めた。その隙を縫って、私たちも準備を始めた。この日出場するブルライダーのほとんどがユタ出身だ。知っている顔ばかりで、スティーブ・ウールジィとウェスリー・シルコックスも来ていた。
残念ながらスティーブは、三日前のカンザスでのロデオで脚の付け根をケガしてしまい、この日は棄権した。が、ウェスリーは乗る。2007年のワールド・チャンピオンにして、今年も現時点で世界ランク4位。WNFR出場はスティーブと共に、ほぼ間違いない。
ロープを出して、ブラシでこすり始めると、また雨だ。みな一斉にギアをしまい、またバッグをシュート下に戻す。私もぎりぎりまで準備を待つことにして、先にストレッチをすることにした。芝生も雨を含んで濡れているが、私が濡れることはいとわない。
ストレッチを終えても、雨が止まない。建物などで覆われている場所がないために、ロープを出しようがない。普段であれば選手のロープがフェンスにかけられている、という光景が、この日はない。みな雨が止むのを待っている。気温も下がっていく。身体を冷まさないように、みな動き回っていた。
ブルファイターのダレル・ディッフェンバックとジョー・バンガートナーの二人も身体を動かしている。二人ともWNFRとPBRワールド・ファイナルズ経験者だ。
ティーム・ローピングが始まってしばらくすると、雨が止んだ。止んでくれた。私たちも一斉にロープをかけてロージンを刷り込ませる。そうしている間に、バレル・レーシングが始まり、ブル・ペンではブルがデリヴァリーに運ばれ始めた。ブルー・ライト・スペシャルは右向きのデリヴァリーへ。それを見届けてから、私もチャップスとヴェストをまとい、そちらへ移動した。
ありがたいことに、バレル・レーシングとブルライディングの合間に、観客を対象としたおみくじの抽選があり、時間が空いた。間を置くことができた。

+601 Blue Light Special
+601 Blue Light Special
ブルー・ライト・スペシャル

右向きのシュートからブルライディングが始まった。私は3番目に出ることになった。マウス・ピースをはめ、ヘルメットをかぶり、グローブをつける。チャドにロープを締めるのを手伝ってもらった。シュートそのものの幅が広かったので、両足を下まで下ろすことが出来る。ブルー・ライト・スペシャルは、私の脚に合う大きさだ。両脚で挟み込んで、ゴー・サインを出した。
最初のジャンプからして高い。着地してすぐに跳び、今度は蹴り脚も高く上がる。私の姿勢は取れている。3度目のジャンプで異変が起きた。ヘルメットがアゴから抜けた。顔の半分あたりまで、ヘルメットがずれてしまった。わずかに一瞬視界がさえぎられた。いままで一度もない出来事だった。左手はロープを放してはいないが、彼は右へ方向を変えていた。次の蹴り脚が帰ってくると同時に、私は3メートルほど向こうに放り出された。ヘルメットは脱げていた。
ダレルがロープを拾ってきてくれた。受け取ってアリーナから引き揚げるが、解せないなにかが頭の中を巡っていた。動画を確認しようとしたが、残念ながら撮れていなかった。仕方なく、チャドの手伝いへ回ることにした。

結果として、チャドもダスティンも、ウェスリーも落ちた。8秒乗りきった選手は一人しかいなかった。しかも89点という高得点で、彼がこのロデオで優勝した。
片付けを終え、3人で車へ向かう。「これからどうする?」ダスティンが問いかける。チャドの家までは4時間半。アリーナの横ではパーティーが始まっていたが、3人とも飲みたい気分ではなかった。スティーブとウェスリーも、家へ帰ると言っていた。
「オレが運転するよ」チャドの一言で、私たちは車に乗り込んだ。
帰り道もまた、ブルライディングに関する話しかなかった。
3人とも、次のロデオのことを考えていた。

左からウェスリー・シルコックス、チャド・コール、私、ダスティン・ダニエルズ、スティーッブ・ウールジィ
左からウェスリー・シルコックス、チャド・コール、私、
ダスティン・ダニエルズ、スティーッブ・ウールジィ

 

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