Jin's Report 2012

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詰問

第2戦 6月16日

【移動距離258マイル/約413km】
“Cedar City PRCA Championship Rodeo” Cedar City, Utah
“シーダー・シティ・PRCA・チャンピオンシップ・ロデオ”
ユタ州シーダー・シティ

3ヶ月ぶりのロデオ。ケガからの復帰戦。当たったブルは、どのブルライダーに聞いても「いいブル」と評判のブル。私も名前は聞いたことがあった。
昨年のソルトレイクで当たった「Butchブッチ」同様、乗る前から楽しみで仕方がなかった。不安よりも興奮。「こいつに乗れれば、まず勝てる」そういうブルだった。

ロデオの二日前にショーンの家に来て、ドロップ・バレルとステイショナル・バレルで復習。細かい点をショーンやベテラン・ブルライダーのジョシュに見てもらい修正し、徹底する。何度も、何度も、何度も。
当日も一人練習してからプレリュードに乗り込んで、フリーウェイを南へ。途中のニーファイでピート・ポウルセンの家へ寄る。彼と練習仲間のブラッド・クルックもこの日シーダー・シティに出場するので、彼らと共に行くことにしていた。
ピートのミニヴァンは、完全にロデオ使用だ。3列目のシートを取り外し、ギアバッグが複数入るだけのスペースを確保するのと同時に、その上に簡易ベッドを取り付け車中泊できるようにしてある。天井には釣り糸を二本張り巡らして、カウボーイ・ハットをかけられるようにしてある。これなら、車内でも大切なハットの型を崩さずに保持できる。小型のクーラーボックスも置いてあり、水のボトルが1ダースは入っている。あちこちのロデオを周るには、うってつけの車だ。プレリュードより燃費は落ちるだろうが、複数のロデオ・カウボーイが乗り込むことで、ガス代は折半できる。
私たち3人に加えて、3月のロデオ・スクールにブルファイターとして参加していた“ワッフル”・ブルックスも乗り込んだ。彼もこの辺りに住んでいて、馴染みの顔だ。
ピートの家を4時半に出て、ロデオ会場に着いたのは7時。ロデオ開始は8時。

 



まずは、そのブルを見に行った。ダイアモンド・G・ロデオ社のK69 Elk Hunt エルク・ハント。小型の黒牛で、筋肉の塊のような体つきだ。パワーはそれほどないが、俊敏で、跳ねる、回る。You Tubeで見た彼の映像での感想だ。かなり高い確率で、ブルライダーを振り落としている。しかも、ほとんどの選手が2秒から3秒。右へフェイクを入れた後、急激に左へ回り込む。コーナーを決める。その速さに対応できるかが、カギだ。
ロデオ・オフィスに向かい、チェック・インを済ませる。エントリー・フィーは221ドル。PRCAもインターネット時代に対応し、エントリー・フィーを、ネットを通じてクレジット・カードで支払える仕組みを確立した。かつてのロデオ・カウボーイが聞いたら、さぞや驚くだろう。
それからピートとワッフルと共に、選手向けに用意された食事を取りに行った。

K69 Elk Hunt エルク・ハント
K69 Elk Hunt エルク・ハント

6月半ばとはいえ、梅雨のないユタ。しかもシーダー・シティは南部に位置し、ネヴァダ州やアリゾナ州に近い。この日も気温は30度を超えている。しかも土曜日。観客席は埋まり、入りきれないからか、あえてそうしたいからか、ピックアップ・トラックの荷台に座ってテイルゲイト・パーティーをしながら観戦している客もいる。
アリーナの周りを歩いているとタイ・ダウン・ローパーで、昨年のNFRでも活躍したマット・シオザワに会った。名前の通り、日系アメリカ人だ。アイダホ州に住んでいるので、サーキット内のロデオでは、よく顔を見る。彼も私を覚えていてくれたのか、久しぶりに言葉を交わした。
ロデオが始まり、私もストレッチをしに場所を探した。食事を取った場所が、今はひっそりとしていたので、そこで始めた。ロデオ・クラウンのショーが始まる頃に、ストレッチを終え、シュート裏に戻る。準備はすでにしていたが、大事なことがまだ一つある。左足のケアだ。骨はまだ完全にくっついてはいない。
足首の周りにアンダーラップを巻き、テープで固める。その上から靴下をはき、さらに足首用のサポーターを着用する。それからブーツを履く。万が一、これで完全に折れてしまったら、シーズンは終わりだ。

ピックアップ・トラックの荷台に座って、ロデオ観戦する人たち。思い思いに楽しんでいます。
ピックアップ・トラックの荷台に座って、
ロデオ観戦する人たち。思い思いに楽しんでいます。

バレル・レーシングが始まる。ロデオのスタッフがシュート裏で、ブルを移動させ始めた。エルク・ハントは左側のデリヴァリーへ。すんなりと3番目のシュートに入ったので、背中についている干草や土を払い、私もロープを巻いた。シュートを離れ、最後のウォーミング・アップで四股を踏む。そしてチャップスをつけ、ヴェストを着た。
バレル・レーシングが終わり、バレルが片付けられ、アリーナにブルファイターたちが登場し、舞台は整った。みんなが待っていた、ブルライディングだ。

左手にロープを巻きつける
左手にロープを巻きつける

私の出番は5番目だった。前の4人はみな落ちた。エルク・ハントは静かだった。ロープを左手に巻きつけているときも、微動だにしない。姿勢を取り、ゴーサインを出した。
ほんのちょっとだけ前に出ると、すぐに大きく首を右に振る。これがフェイク。そして大きく左へ回りこむ。これがコーナー。予想通りの動きにもかかわらず、私の両足はすでにブルロープより後ろにあった。巻いてあるロープよりも前にないといけない。そのためには土台となる両脚もロープの前、ブルの肩の辺りに膝がないといけない。ポジショニングの後れは、そのまま動きの遅れとなって、ロープを握る左手と股間のあいだに埋めることの出来ない距離が生まれ、私は左へ回りこむエルク・ハントの井戸の中へと吸い込まれていった。
ロープを拾い上げてくれたブルファイターのコーリー・ウォールが「なんだったんだ、今のは?!」ふがいない私への檄だ。「なんだったんだ、今のは!?」ロープを受け取りながら、言われた言葉でそのまま返した。ふがいない私自身を、問い詰めていた。

この日、18人のブルライダーが出場して、8秒乗りきったのはわずかに二人。前日も18人が出場して、8秒乗りきった選手はゼロ。スティーブ・ウールジィ、ウェスリー・シルコックス、トラヴィス・アトキンソン、コリン・マクターガット、ソニー・マーフィーらNFR出場経験者や現在の世界ランキングでも上位につけている選手が、この二日間ここで乗ったにもかかわらず、二人しか8秒乗りきれなかった。ダイアモンド・Gのブルたちを褒めるしかない。
ピートもブラッドも落ちた。4人で再びピートのミニヴァンに乗り込み、この日のブルライディングについて語り合う。悔しいのはみな同じ。けれども、今日は今日、明日は明日。来週のロデオが、待っている。


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