Jin's Report 2012

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ナヴァホ

第6戦 7月4日

【移動距離282マイル/約451kmアリゾナ州プレスコットから】
“Navajo Nation Fourth of July PRCA Rodeo” Window Rock, AZ.
“ナヴァホ・ネイション・フォース・オブ・ジュライ・PRCA・ロデオ” 
アリゾナ州ウィンドウ・ロック

なんの結果も残せないまま、ここまできた。リーハイもプレスコットも、思うようにはいかなかった。
しかも、アメリカ特有の時差を勘違いしていて、私がロデオ・アリーナに着いたときには、すでにロデオが始まっていた。空はどんよりとし、灰色の巨大な雲がうごめいている。雨が降る、しかもそう遠くない頃に。
車を止め、その場で着替え、ロデオ・オフィスへ駆け込む。エントリー・フィー221ドルを払い、すぐにシュート裏へ。私のブルはカー・プロロデオ社の-56 Illegal Smile(イリーガル・スマイル)。一本角の覚えやすい顔のブルだった。アリーナでは、すでにスティア・レスリングが行われている。いつもより時間は少ない。
昨夜、プレスコットにも来ていたブルライダーたちと顔を合わせ、声をかける。準備を済ませ、すぐにストレッチをしに、一度シュート裏を離れた。



サドル・ブロンコが始まる頃には、雨が降り出していた。風も強く、ほぼ満員の観客の中には、傘を差していた人もいたが、無意味だった。それでも、席を立ち、帰ろうとする人は皆無だった。みな、この状況でのロデオを楽しんでいた。ナヴァホの人たちだけでなく、ネイティブ・アメリカンの人たちは、みなロデオ好きだと聞く。周りを見ると、白人が少ない。選手やストック・コントラクターのスタッフに白人はいるが、観客やボランティアとして働いている人たちは、みなナヴァホの人たちだ。これだけ多くのナヴァホの人たちに囲まれたのは、初めてだ。「アメリカ人とは、いったい“なにじん”なのだろう?」そう思った。
ブルライディングまで、あっという間だった。種目の合間の余興がないと、こうも進行が早いのか?と改めて思った。待ち時間が短いのはありがたいのだが、こういうときに限っては、話は別だ。
イリーガル・スマイルが、右のデリヴァリーに入る。ロープを巻く。5番目に出た。
2度目のキックがきたときに、すでにタイミングがずれていた。3度目のキックで両足が外れ、前にもんどりうつように落ちる。一人のブルファイターが、完璧なタイミングで私とブルの間を横切り、ブルの注意を私からそらしてくれた。

バー・T・ロデオ社 #624 Sport Duck スポート・ダック

シュート裏に戻っても、言葉も出なかった。なにかがかみ合っていない……。
雨は本降りとなり、激しさを増していた。何も考えることなく、片付けを済ませ、選手用の食事が提供されていたテントに向かう。残念ながらすでに食事はなくなっていて、水のボトルだけもらえた。
泥とブルの糞で汚れたジーンズと、雨でびしょ濡れのシャツのまま、車の席に座りドアを閉じた。
どこにも行きたくなかった。
誰にも会いたくなかった。
誰とも話したくもなかった。
一人でいたかった。
車を撃つ雨音だけが聞こえていた。

1時間以上そのままでいた。アリーナの照明が消されていき、駐車場の車の数が減っていき、あたりも少し静まり返りつつあった。このまま、この駐車場で夜を明かそうと思ったが、この雨では眠れそうもない。「とりあえずは着替えよう、そしてここを出よう」そう思い、車を出した。
ハイウェイに出てすぐに大きなスーパーがあった。そこのトイレを借りて、着替えた。トイレの前にデリのカウンターがあり、女性が一人、パソコンを出していた。
車に戻り、私のパソコンの入ったバックパックを抱え、隣にあったマクドナルドへ向かった。全米のマクドナルドで、Wi-Fiが無料だ。旅先では、重宝する。
そのマクドナルド。夜9時を回っていたにもかかわらず、すべての席が埋まり、20人以上の人たち(みなナヴァホ)が列を成していた。こんなに混んでいるマクドナルドを見るのは久しぶりだ。とても、座って食事をするような状況ではなかった。すぐに出て、またスーパーに戻った。

デリのサンドイッチとチョコレート・ミルクを買い、イート・イン用のテーブルへ向かった。あの女性が、まだパソコンを開いていた。インターネットにアクセス出来るのか尋ねると、「マクドナルドのWi-Fiにアクセスできるわよ」と教えてくれた。
食事を済ませ、私もパソコンを開けた。ウィンドウ・ロックからユタへの帰り道を調べた。メールのチェックなども済ませ、必要な返信も終えた頃に、スーパーの警備員がやってきて、10時で閉店なので退店するように、と伝えてきた。私はパソコンを閉じた。
女性も帰り支度を始めた。また、声をかけた。

彼女は隣の州ニュー・メキシコのギャラップに住んでいるらしい。身内とともにここまできていたが、彼らはバーへと繰り出したそうだ。迎えに来てくれるのを待っていたが、当分なさそうだった。
隣の州といってもギャラップは、ウィンドウ・ロックから20分か30分ほどだ。私もギャラップまで行き、そこから北へ向かうルートだった。
私と彼女はスーパーを出た。
彼女は私の車の助手席に座った。
二人で、ウィンドウ・ロックをあとにした。

彼女と別れたのは、夜中の2時を過ぎていた。
その夜、私は彼女に救われた。

 

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