Jin's Report 2016

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2016 Wrangler National Finals Rodeo レビュー

番外編

ネヴァダ州ラス・ヴェガス

毎年恒例となったロデオ界の“スーパー・ボウル”はたまた“ワールド・シリーズ”とも形容されるWrangler National Finals Rodeo(ラングラー・ナショナル・ファイナルズ・ロデオ、以後WNFR)が2016年12月1日から10日にかけてネヴァダ州ラス・ヴェガスにあるトーマス&マック・センターで開催された。
Professional Rodeo Cowboys Association(以後PRCA)の元で開催された、1年間のレギュラー・シーズンで獲得した賞金額上位15人のみに与えられる出場権は、ロデオに生きるカウボーイたちにとって、その年最大の目標であり、夢でもある。
あるカウボーイたちによれば、年間365日のうち、Home(自分の家)に滞在するのは、100日足らず。年が明けて2017年になったとはいえ、PRCAの2017シーズンはすでに昨年の10月1日に始まっているので、今年のWNFRを目指すカウボーイたちは、クリスマス休暇を家族と共に過ごし、この1月からテキサスやコロラド、サウス・ダコタあたりのロデオを周るはず。レギュラー・シーズンが終わるのは、9月30日。残りの9ヶ月間で、鎬を削る。

そうして辿りついたWNFRだけに、出場を決めたカウボーイたちには各種目別にホテル&カジノに部屋が用意され、出場を記念する記念品が贈呈され、最高のもてなしを受ける。その一方で、ラス・ヴェガスに滞在期間中はメディアへの対応、いくつものセレモニーやイヴェントに『選手』として参加せねばならず多忙を極める。その状況の下で、賞金総額11億円を超える世界最高のロデオに毎日、10日間(10ラウンド)連続で最高のパフォーマンスをしなければいけない。なぜならば、ラウンドごとに勝者が決まり賞金が支払われるのだが、その賞金を手にすることが出来るのは1位から6位までだからだ。
その賞金額、2016年の場合は
1位 $26,371. およそ308万円
2位 $20,713. およそ242万円
3位 $15,654. およそ183万円
4位 $11,000. およそ129万円
5位 $6,769. およそ79万円
6位 $4,231. およそ50万円
だった。そして10日間での総合成績(Average アヴェレージ:獲得した総ポイントや総タイム)に準じて、1位から8位まで賞金が支払われる。この金額が大きく、1年間の獲得賞金総額で決まる最終の世界ランキングとワールド・チャンピオンの決定を左右する。
1位 $67,269. およそ787万円
2位 $54,577. およそ639万円
3位 $43,154. およそ505万円
4位 $31,731. およそ371万円
5位 $22,846. およそ267万円
6位 $16,500. およそ193万円
7位 $11,423. およそ134万円
8位 $6,346. およそ74万円
(それぞれの日本円金額は2017年1月上旬の為替レート117円で換算した。)


ぼくの種目がブルライディングなので、どうしてもブルライディングばかり注目してしまうが、ブルライディングと同じく『Rough Stock Event ラフ・ストック・イヴェント』と呼ばれるベアバック・ライディングとサドル・ブロンコ・ライディングも、やはり気になってしまう。
特に今年、というか毎年のことだが、サドル・ブロンコ・ライディングのライト一家(The Wright Family)にはロデオ界のみならず、全米が注目していた。事実、あのNew York Timesでも特集が組まれたほどだ。なにしろこの種目の出場選手15人のうち、5人がライト一家だったからだ。
長兄のCody(コーディ:過去2回ワールド・チャンピオンになっている)、双子のJakeとJesse(ジェイクとジェシィ:ジェシィは2012年のワールド・チャンピオン)、そしてコーディの息子二人RustyとRyder(ラスティとライダー:ラスティは2015年の最優秀新人王)が2016年のWNFRに出場した。同じ種目で親子3人が出場したのも凄いのだけれど、開幕と同時にすべてのロデオ・ファンの度肝を抜いたのが、今年プロになったばかりのライダー(18歳)だった。
第1ラウンド、第2ラウンドと続けて優勝。その後も第3ラウンド、第4ラウンドと4日連続で優勝してしまった!開幕4ラウンド連続して優勝したのは史上初。加えるならば、WNFRにおけるラフ・ストック・イヴェントで4ラウンド連続して優勝したのは過去に二人しかいない。
結果から言うと、ライダーは第5ラウンドから第8ラウンドまで落馬して、この間の賞金はゼロ。ところが第9ラウンドで8秒乗り切って、しかも優勝。そして最終第10ラウンドは落馬した。5ラウンドで5勝。正に乗るか落ちるか、乗れば優勝という激しい10日間だった。1歳年上のラスティは、同じように10日間で5頭乗り切ったが賞金に手が届いたのは3回だけ。アヴェレージでライダーは12位、ラスティは13位で、共にこちらの賞金を得ることはできなかった(とはいえ、ライダーは単純にこの10日間で1,540万円以上獲得した)。
安定していたのが彼らの父親コーディだ。10日間で8頭乗り、そのうち5回賞金を獲得し、さらに第8ラウンドと最終第10ラウンドで優勝した。アヴェレージでも5位だった。その存在感はやはり強く、息子二人に負けじとばかりに魅せたのが、第10ラウンド。90.50ポイントの、ものすごいライドをしてのけた。
ジェシィとジェイクは、アヴェレージで7位と8位。共にまずまずのWNFRだったと言える。
最終順位でライダーが4位、コーディ6位、ジェイク8位、ラスティ9位、ジェシィは10位だった。ライダーは文句なしで、昨年の兄ラスティに続き最優秀新人王を獲得した。



ベアバック・ライディングでも、とんでもない記録が誕生した。ワールド・チャンピオンに輝いたTim O’Connell(ティム・オコゥネル)が、10日間で10頭乗り切り、うち賞金を手にしたのが8回!アヴェレージでも1位で、年間獲得賞金総額が$374,271.53(およそ4,400万円!$1=\117で換算)。これはPRCAの単一種目での年間獲得賞金額の最高記録となった。ぼくにとって驚きと共に嬉しかったのが、この記録がベアバック・ライディングの選手によってもたらされたことだ。
近年、ベアバック・ライディングの人気は廃れていて、ぼくが過去に出場したいくつかのロデオでは、選手が一人も集まらなかったこともあるくらいだ。ブルライディングは人気があるので若い選手も増えているのだけれど、残念なことにベアバック・ライディングの選手数の増加率はブルライディングやサドル・ブロンコ・ライディングに比べると、鈍い。このティムの活躍で、ベアバック・ライディングの選手でも年間を通してこれだけの賞金を獲得できる可能性があると示すことで、ベアバック・ライディングの人気回復につながることを願う。それが一つの種目に偏らず、ロデオ界全体の競技人口の増加と繁栄にもつながると信じているからだ。

今回のWNFRで活躍が目立ったのは、アメリカのカウボーイたちばかりではなかった。
まずは、カナダ。
カナダのロデオも盛んで、ベアバック・ライディングとサドル・ブロンコ・ライディングにも素晴らしい選手が多く、過去にはワールド・チャンピオンも輩出している。
ベアバック・ライディングでは、Jake Vold(ジェイク・ヴォゥルド)が第4ラウンドから第6ラウンドまで3日連続で優勝、アヴェレージでもティム・オコゥネルに次いで2位につけ、最終の世界ランキングでも2位でシーズンを終えた。
そしてサドル・ブロンコ・ライディングで、ライト一家と2015年のワールド・チャンピオンのJecobs Crawley(ジェイコブズ・クロゥリィ)を抑えて優勝したZeke Thurston(ゼケ・サーストン)。実に、14年ぶりにカナダ人のサドル・ブロンコ・ライディングのワールド・チャンピオンが誕生した。
ティーム・ローピングでは、Levi SimpsonとJeremy Buhler(リーヴァイ・シンプソンとジェレミィ・ブーラー)のペアが、ワールド・チャンピオンに輝いた。この種目でカナダ人のペアがワールド・チャンピオンとなるのは、PRCA史上初!とんでもない快挙を成し遂げた。
そして一人で複数の種目をこなす選手に与えられるAll Around(オール・アラウンド)のタイトルはブラジル人のJuniour Nogueira(ジュニァワ・ノゲイラ)が獲得した。このタイトルをブラジル人カウボーイが獲るのも史上初!彼もPRCAの歴史に、その名を刻んだ。




そして肝心のブルライディングでは、ここ2年連続してワールド・チャンピオンだったSage Kimzey(セイジ・キムジィ)が優勝して、3連覇。まだ22歳の彼の成長と快進撃は、留まるところを知らない、と誰もが思ってしまうほどだ。まだ20代前半の凄い選手は沢山いて、すでにWNFRに出場した経歴を持つ選手も多いのだけれど、彼は群を抜いている。
そんな中で、このWNFRでぼくが注目していたのは、ヴェテランの一人、Shane Proctor(シェーン・プロクター)だった。2011年のPRCAワールド・チャンピオンである彼は、もともとはProfessional Bull Riders(以後PBR)を主戦場としていた。それがPRCAでも活躍し始め、ワールド・チャンピオンとなったことで、2度目のPRCAタイトルとPBRのワールド・タイトルを同一年に獲るという、途方もない目標に向かって彼はブルライディングを続けている。事実、2011年以降、WNFRを逃したのは2014年だけ。PBRのワールド・チャンピオンを決める大会、PBR World Finals(PBR ワールド・ファイナルズ)の常連でもある。
2016年の夏にぼくが出場したロデオでも顔を合わせたので、少し話を聞くことが出来たのだけれど、とにかく彼は目標に向かって突っ走っている様子だった。専用の大型のヴァンを運転し、ロデオからロデオへの旅を続け、時には飛行機で移動し、PRCAとPBRでひたすらブルに乗り続ける1年を過ごしているということだった。のちに、記事として掲載された彼のインタビューを拝読したが、家族の協力なしでこのブルライディングを続けることはできないと語っていて、家族への感謝は惜しみないものだった。奥さんは子供たちと共に生活をし、彼が帰還するまで家を守る。日本でいえば、単身赴任と割り切れるだろうが、恐らくこれほどの危険を伴う単身赴任もないだろう。
そのシェーン。このWNFRで、とんでもない記録に挑んでいった。
ブルライダーとして、誰もが目標とするワールド・タイトルとともに目指す目標が、WNFRでの『10 for 10』。10日間、10ラウンド、10頭すべてのブルに8秒乗り切るという記録だ。この記録、WNFR史上、わずか3人しか達成していない。しかも、その記録全てが、ブルライディングの黄金期ともいわれる1980年代後半から1990年代前半に達成されている。
シェーンは、第1ラウンドで2位につけ、第2ラウンドでも4位。圧巻だったのが、選りすぐりのブルばかりが集められる『ランク・ペン』と呼ばれる第3ラウンドで、91ポイントを出しての優勝(ちなみにこの日、8秒乗り切ったのは15人中シェーンとセイジの二人だけだった)!これで勢いがついて、なんと7日連続7頭乗り切って、その全てで入賞。賞金を加算していった。
「これは、もしかしたら行くかも……」と日本にいながら毎日WNFRをチェックしていたぼくも思ったくらいだ。
しかし残念ながら、第8ラウンドから最終第10ラウンドまで8秒乗り切ることはできず、記録は達成されなかった。それでも、アヴェレージで1位を獲得し、年間の順位もセイジには及ばなかったものの3位で終えた。今年32歳になるヴェテラン。おそらく今年もPRCAとPBR二つのタイトルを目標に、彼は突き進むだろう。


シェーン・プロクターと


10日間、10ラウンド。ここには記さなかったが、他の種目でも目を離せないタイトル・レースが展開していて、劇的な幕切れとなった種目もあった。本当に毎年、何かしらの“ドラマ”が起こるのがWNFRで、また、起こるからこそ観ている側は惹きつけられるのがWNFRだとも言える。
12月のラス・ヴェガス。第1木曜日からの10日間。おそらく今年は、12月7日から16日までかと思われるが、皆さんもこのロデオの興奮のるつぼに、どっぷりと浸かってみませんか?

FWD▶

  

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